同じエリアの店舗でも勝敗は大きく分かれる
対象とするデータセットは、22部門、134カテゴリ、645サブカテゴリに及び、約30の店舗の顧客データが含まれています。
このデータによるとエリアパネル店舗での冷凍食品カテゴリー全体の売上は昨年と比較して下降傾向にあるのですが、図表1からはその中でも明確な勝者と敗者が存在するということがわかります。
図表1は今回分析対象としたデータを、縦軸に昨対の差分、横軸に2021年の冷凍食品部門の売上高を置いて店舗ごとにマッピングしたものです。縦軸の0より上は昨年より売上が伸びているということですし、0より下は昨年より売上が落ちているということを示しています。右へ行けば行くほど、その店舗の冷凍食品部門の売上が高いということです。
この図表で、い県の店舗Aと店舗Bを比較してみると、売上自体は似通っているものの、成長率はAがプラス、Bがマイナスで、大きな違いがあることがわかります。
次に、好調店と不調店に絞って、どのサブカテゴリが売上に影響しているかを分析していきます。次のグラフ(図表2)をみて特に注目すべきは、冷凍米飯加工品の売上が共通の成長要因となっている点です。商品別の売上構成を分析したところ、味の素の「ザ★チャーハン 600g」やニチレイの「本格炒め炒飯 450g」などが好調な売上を示しており、これらの商品が店舗の成長率に大きな影響を与えているということがわかりました。
不調店・好調店問わず鍵となるのは冷凍炒飯
そこで、冷凍米飯とよく併売されるカテゴリのリフト値を算出し、消費者の購買行動を詳細に分析してみました。すると、冷凍米飯加工品の購入者は特定の商品カテゴリとの高い関連性を示しているということがわかりました。
これらの購入者は、和食(調理済の焼鳥、煮物、おでんなど)、洋食(冷凍ピザ・グラタン類、レトルトシチュー、ハンバーグ等)、中華(肉団子、その他中華惣菜)といった多様なジャンルの商品を選び、半調理品や調理済食品だけでなく、唐揚げ粉類、焼き肉のたれ、その他のたれといった自分で調理する必要がある商品も購入しています。
この結果から、冷凍米飯加工品の購入者は、手軽に調理できる食品だけでなく、自分で調理する楽しみを求める傾向があること、また和洋中の多様なジャンルを楽しむ傾向があることが読み取れます。これは、商品開発やマーケティング戦略を立てる際の重要なインサイト(=洞察)となります。
さらに、協調フィルタリング※を用いた売上予測からも新たな発見がありました。「オーマイ 五穀ごはんと野菜を食べるカレー 320g」は、予測金額(この先予測される売上高)が最も高く、これからの売上が大きく伸びる可能性があります。
また、「ニチレイ 本格炒め炒飯 450g」は、予測客数(この先予測される客数)が最も多く、これから多くの消費者に選ばれる可能性があるということです。
そして、い県の好調店Aでは、「ニチレイ 本格炒め炒飯」の予測金額が48,561円、予測客数が81人となっており、引き続きこの商品が好調に売れる可能性があることがわかりました。
一方、不調店Bでも、予測金額が53,358円、予測客数が86人となっており、こちらでも「ニチレイ 本格炒め炒飯」が好調に売れる可能性があります。
これらの予測は、商品のストックやプロモーション、シェルフの配置など、店舗運営に関する意思決定に役立つ情報を提供します。さらに、市場全体の売上が下降傾向にある中でも、特定の商品が売上を伸ばす原因を探求することで、これからの商品戦略を立てるための重要なヒントを提供します。
あなたがもしこのチェーンの冷凍食品のバイヤーだったとしましょう。この分析から、不調店Bでニチレイ 本格炒め炒飯の陳列量を増やしたり、棚位置を変更したりすることもあり得るでしょう。
また、今後の伸び率が高いと思われる「オーマイ 五穀ごはんと野菜を食べるカレー 320g」を注力商品として売り込んでいくこともできそうです。
個々の商品の売上推移や、好調店と不調店の差を詳細に分析することで、成功の鍵となる可能性があるインサイトを見つけ出すことができます。これからの市場動向とともに、これらの商品と店舗の動きに注目していきましょう。
※協調フィルタリング…多くのユーザの嗜好情報を蓄積し、あるユーザと嗜好の類似した他のユーザの情報を用いて自動的に推論を行う方法論。
《取材協力》今村商事