売上・利益など「業績評価」より、実行と徹底力を評価する「行動評価」が重要

狭小商圏時代の店長の職務は「完全作業」「標準化」「固定客づくり」

不特定多数の「浮動客」相手の商売が主体だった時代の店長の職務(果たすべき任務)と、特定多数の「固定客」との長期的な信頼関係を築く時代の店長の職務は大きく異なる。この項では、狭小商圏時代の店長の職務についてまとめてみよう。(月刊マーチャンダイジング2022年3月号より抜粋)

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MDの企画部隊が商品部、MDの実行部隊が店舗運営部

小売業の活動の総称をマーチャンダイジング(MD)と呼ぶ。MDとは、直訳すると「商品化計画」と訳される。MD活動とは、メーカーが製造した製品(プロダクツ)の売り方を開発し、商品(マーチャンダイズ)に変える活動全般を指す。

小売業のMD活動で行う売り方の革新は、たとえば「つくる立場」「売る立場」から、「買う立場」「使う立場」に製品を再編集し、選びやすく買いやすい「商品分類(アソートメント)」を設計することである。商品分類の設計は、さまざまな業界の商品を品揃えできる小売業・卸売業だけが提案可能なMD活動の根幹になる。

また、商品構成(棚割の状態)を設計することもMD活動である。すべての商品がフェース1で陳列されている状態は「売場」ではなくて「ショールーム」である。商品によって陳列量を変える商品構成も重要なMD技術である。

MD活動は、商談・仕入れによる商品選定、販売促進(プロモーション)、POPや陳列・演出、売場レイアウト設計、商品開発、補充・物流設計と多岐にわたる。

仕入れ担当の「バイヤー」とは異なり、商品開発を担当する「マーチャンダイザー」は、仕様書発注→物流設計→売り方の開発という「生産」から「販売」までのすべてのプロセスを企画・設計し、その結果に責任を持つ。

前置きが長くなったが、小売業の組織は、上記で述べたMD活動の企画部隊である「商品部」と、MDの実行部隊である「店舗運営部」の2つに大きく分けられる。店長が属する組織は、「店舗運営部」である。上司は、スーパーバイザー(エリアマネジャー)、店舗運営部長になる。

店長の最大の職務は完全作業の実行と徹底

MDの実行部隊「店舗運営部」の店舗責任者である店長の最大の職務は、商品部が決めたMDのプランを店舗で完全に実行することである。

そのことを小売業では「完全作業」と呼ぶ。完全作業の達成が店長に求められる最大の職務である(図表1)。

[図表1]店長の主要な「職務」
店長は、売上・利益などの「業績評価」よりも、実行と徹底力を評価する「行動評価」のウエートの方が高い。

店の売上は、立地や競争環境などの外部的な要因で決まることが多く、売上(業績)の責任を店長に一方的に押し付けることはできない。

MD活動を成功させるためには、店長をはじめとする現場の実行担当者の役割はきわめて大きい。私は、MD活動が成功するための70%は店舗での実行力・徹底力、つまり「完全作業力」で決まるとおもっている。

完全作業の徹底が店長の最大の職務

いくら素晴らしい商談をし、素晴らしいMDプランを立てても、店舗現場で実行されなければなんの意味もない。しかし、現実の店舗現場の完全作業力はまだまだ低く、失われた売上(機会損失)は大きい。逆説的にいえば、それだけ完全作業力の向上で増える売上の余地は大きいといえる。

人口減少時代に突入した日本では、「過激な販促で大きな売上」という成功体験は通用しない。狭小商圏時代の最大の売上対策は、「不完全作業」による「機会損失(チャンスロス)」を防ぐことである。

そのためにも店長は「凡事徹底」が最大の競合対策であるという意識を強く持ちたい。プランニングが得意な「頭でっかちの組織」よりも、二流・三流の戦略でも、完全作業力・実行力に勝る組織の方が競争に勝つといわれている。

棚割の徹底・改善力が低くて、本来はあるべき売れ筋がVOID(棚札も商品もなくフェースが消失した状態)による機会損失も、実は多くの店舗現場で発生している深刻な課題である。

すべての事件は現場で発生しているのである。

チェーンストアは小さな行動が大きな成果に直結する

完全作業力がますます重要になっている最大の理由は…

 

続きは月刊マーチャンダイジング 2022年3月号月刊マーチャンダイジングnote版にて。