価格・レイアウト調査で見る激戦区の現状

[茨城県水戸市] 競合店まで300m!ドラッグストア接近戦リポート

今回は関東のなかでもとくに近年競争が激しくなっている茨城県水戸市の激戦地区をリポートする。(構成・文/月刊マーチャンダイジング編集長野間口 司郎 調査/本誌編集部調査協力/株式会社ジェムコ)(月刊マーチャンダイジング2022年2月号より抜粋)

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全国平均と比較して子供、現役世代の多い水戸市

水戸市地図

茨城県の県庁所在地、水戸市は県のほぼ中央に位置している。鉄道は、JR常磐線・水戸線・水郡線、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線が走り、道路では常磐自動車道、北関東自動車道、東水戸道路や国道6号、50号などの幹線道路も整備されており交通の便はよい。主な産業は商業で、産業人口のうち約6割が第三次産業に就いている(水戸商工会議所調べ)。

2021年11月1日時点の人口は26万9,141人で平均1世帯人数は2.15人。人口は2015年の27万783人をピークに緩やかな減少傾向にある。2021年10月1日時点の住民基本台帳の年代別人口構成比を見ると15歳未満が12.6%、15〜64歳(生産年齢=現役世代)が60.6%、65歳以上(高齢者)26.8%となっている。日本全体では、15才未満11.8%、15〜64歳59.1%、65歳以上は29.1%(2021年9月15日時点)なので、全国平均よりは若く、子供や働く世代の多い都市だといえる。

JR水戸駅周辺の繁華街には昔ながらの店や閉店になったままの店、いわゆるシャッター商店なども見られ、さほど勢いがあるとはいえない。人口は郊外へと移動しており、比較的若年世代が多いことからDgSが多数出店しているものとおもわれる。

冒頭述べたように関東だけで4,300万人の人口があり、高齢化、人口減が進む他県本拠地の大手DgSが一斉に関東のドミナント化を目指している。茨城県もそのひとつで、水戸に出店が集中しているのもその傾向の一環である。

コスモス薬品の関東進出で水戸のシェア争いが一層激化

[図表2]水戸市に出店している主なDgS
水戸市に出店するDgSとその店舗数を示したのが、図表2である。茨城県つくば市が本社だった寺島薬局=現ウエルシア、隣県である栃木県小山市に本社を構えるカワチ薬品、同様に隣県である千葉県松戸市に本社のあるマツモトキヨシ=現マツキヨココカラ&カンパニーが時期的には早くから水戸市に出店しており、ツルハHD(本社・北海道)の関東進出で同社の店数が一気に増えた。

また年間、総店舗数の15%近くを高速出店しているクスリのアオキ(本社・石川県)が3店舗を出店。同社は関東出店を強化しており、群馬県に77店、茨城県に49店、栃木県に43店、埼玉県38店、千葉県17店、合計224店を関東に出店。これは全店舗数の28.7%にあたり地元北陸3県の227店に匹敵し、関東が今後最大のドミナントエリアになる可能性も高い。それだけ関東が肥沃な大地であるということだ(店舗数は2021年11月20日時点)。

そして、DgSの水戸出店ラッシュに弾みをつけているとおもわれるのがコスモス薬品(本社・福岡県)である。同社は2020年から本格的に関東出店を始めており、2021年11月30日時点で茨城県11店、栃木県8店、東京都7店、千葉県6店、埼玉県5店、神奈川県2店、群馬県2店、合計41店を関東に出店、今後も年間20〜30店を関東に出店するとしている。

図表9は今回調査した企業の全国の出店状況と、もっとも多く出店している都道府県の1店舗当りの単純人口(商圏人口ではなく)を基準にドミナント状況を示したもの(図表の全体は本誌2022年2月号をご覧ください)。たとえば、コスモス薬品なら福岡県にもっとも多く出店しており、福岡県並みの人口比(2万8,887人に1店舗)で見ると各都道府県をどの程度ドミナントしているかを示している。

画像

ウエルシアHD、ツルハHDはM&Aを成長戦略の柱にしているので本拠地に加え合併先のエリアでドミナント率が高いのに対し、コスモス薬品はM&Aなしの純粋成長を実践しており、九州から着実にドミナント化を進めているのがわかる。上記の要領で計算すると、九州・沖縄が117%、四国93.4%、中国74.2%と九州、中四国ではかなりの密度で出店している。

他店が出店してDgS利用者が一定程度いるエリアへ新規出店し、食品に重点を置いた生活必需品の品揃えを厚くし、低価格、EDLP(非特売型、毎日低価格)でシェアを取って周辺をドミナント化していくという手法を得意としており、他エリアで成功を収めている。

この手法で関東を計画的にドミナント化していけば、先行する企業にとっては脅威だろう。

[図表3]接近戦エリア ①堀町・渡里エリア(今回の調査エリア)

今回調査した堀町・渡里エリア(図表3)でも先行出店するカワチ薬品、ツルハHDの至近距離に出店している。ディスカウントドラッグコスモス堀町店からツルハドラッグ水戸堀町店までは約300m(ツルハの駐車場からコスモスの看板が見える)、カワチ薬品渡里店までは約550mである。また、カワチ薬品とツルハドラッグの距離は約350mとなっている。

コスモス薬品は600坪タイプが標準モデルだが、関東では600坪にこだわらず出店するとしており450〜500坪タイプが多い。

大店法の届け出によれば堀町店の売場面積は1,182㎡=約358坪と同社としては小ぶりな部類に入る。

ウエルシア 水戸堀町店(調剤薬局併設)
所在地/水戸市堀町878-3
営業時間/DgS 24時間 調剤薬局 9:00〜19:00(日祝休み)
カワチ薬品 渡里店
所在地/水戸市渡里町字新田後2713-1
営業時間/10:00〜21:00
クリエイトSD 水戸中丸店
所在地/水戸市中丸町278-1
営業時間/10:00〜21:00
クスリのアオキ 吉沢店(調剤薬局併設)
所在地/水戸市吉沢町196-3
営業時間/9:00〜22:00
調剤薬局/9:00〜19:00 土曜日9:00〜13:00
処方せん受付/(日祝休み)
ディスカウントドラッグコスモス 堀町店
所在地/水戸市堀町1002-4
営業時間/10:00〜21:00
ツルハドラッグ 水戸堀町店
所在地/水戸市堀町957-1
営業時間/9:00〜24:00

2021年11月オープンの上水戸店は1,539㎡=約466坪、2022年3月オープン予定の千波店は1,546㎡=約468坪といずれも500坪未満。日用品大手卸売業のジェムコの調査によれば、堀町・渡里エリアの商圏人口は1万9,000人、上水戸エリアが1万1,000人、千波エリアが2万9,500人である。同社は1万人を標準的な商圏人口としているので、いずれのエリアもそれを上回り客数が見込める。不動産コストも削減して400〜500坪で効率よく売上を挙げるのが目下の関東モデルといえる。

[図表8]接近戦エリア情報

競合に挑まれるカワチ薬品は食品、接客強化で対抗

堀町・渡里エリアだけでなく、水戸の接近戦エリアを見るとカワチ薬品と他企業が競合する場所が多く、売場面積が大きな店舗中心で比較的広域集客型の同社が、小商圏モデルの企業に接近戦を挑まれているようにも見える。

日本における食品強化型メガDgS元祖のカワチ薬品は、店舗によっては生鮮を扱うなど食品をさらに強化、薬剤師によるヘルスケアのカウンセリング販売も実施して、固定客づくり、足元商圏強化に努めている。調査時、客数は多く店内でのカウンセリング風景も複数見られた。

クスリのアオキは、水戸市内の3店舗はいずれも調剤薬局併設。生鮮を本格的に扱いを始めた時期は業界でも早く、最近の潮流である「生鮮&調剤」の先頭グループである。直近の売上構成比を見ると調剤10.0%、食品41.6%となっている(2021年5月期)。

クリエイトSDの調査店は食品充実、定番売場でプロモ展開するなど独特な売り方をしている。接客レベルは他エリア同様非常に高い。

今回調査していないが、マツモトキヨシは水戸への出店時期は比較的早いのだが、それほど店数を増やしておらず売場面積150坪程度の店舗年齢の高い郊外型店中心の出店となっている。他店と比較するとやや競争力に欠けるので、この地域でシェアを上げるなら松戸大金平店のような郊外型のパワフルな新パターン店を導入するなど大規模な改装が必要ではないか。

下着、ルームウエアを強化するコスモス、クリエイトSD

いくつかのカテゴリーに関する売場スペースを調査した(調査内容について詳しくは本誌2022年2月号をご覧ください)。衣料品に関してコスモス薬品が15本と最多。同社ではプライベートブランド(PB)の機能性下着(あったかインナー)をエンド展開するなど実用衣料に力を入れている。

クリエイトSDも定番棚プラス回転式の什器で8本展開、薄手のトレーナー、ズボンなどルームウエア系の商品を低価格で販売している。ワンストップショッピング性が求められているので、DgSの下着やルームウエアはもっと強化の余地があるだろう。

文具ではクリエイトSDが最多。同店は文具と並んでミニカーやままごとセットのような玩具も販売しており、子育て世代の支持を狙っている。100円ショップに取られているカテゴリーだが、「機能性がある」あるいは、「品質のよい」文具が欲しいというニーズはあるのでここも工夫のしどころである。

ペットはカワチ薬品24、コスモス薬品が28本、クリエイトSD29本と充実している。どのDgSも売場面積に合わせて拡充しているカテゴリーだ。ペットフードは回転が速いし、ペット用品購入世帯は掃除用品、消臭芳香剤など関連購買もある。シャンプー、コンディショナーなどのインバスヘアケアはどの店もスペースを割いている。定番、エンドを合わせるとツルハが20本で最多。ヘアケアは、志向性が多様化してニーズが分散している代表的なカテゴリーだ。

ツルハは売場を増やすだけでなく、収益性の高い専売品(ツルハ限定商品)を推奨販売するなど売り方にも工夫が見られる。

郊外型DgSにとって必須カテゴリーになっている日配品は…

続きは月刊MD 2022年2月号で!