「コンビニに生ビール」を定着させたニューデイズの舞台裏

来店客数はセブン-イレブンの1.5倍、駅ナカ市場の魅力を知らしめる存在となったニューデイズ。目的買いの購買特性から客単価が低いなど課題も残されているが、生ビールの販売やご当地フェアなどのキャンペーンを行うことで“お客を飽きさせないコンビニ”を追求し、集客力アップに努めている。店舗前通行量の多さに安住せず、新たな商品、オペレーション、魅力ある販促に取り組む駅ナカコンビニの最新事情を探る。

躍進のカギを握る3つのポイント

駅ナカコンビニのニューデイズ(New Days)はJR東日本リテールネットが運営し、首都圏を中心として、北は青森から西は静岡まで496店舗(7月末、キオスクタイプを除く)を展開。特殊立地である駅ナカにおいて独自の進化を遂げてきた。このニューデイズが注目を集めている。

注目の一つは「生ビール」販売。この夏、セブン-イレブンが実験導入を計画したが、店内の告知段階でSNSにより拡散、yahoo!のトップニュースになると”賛否”をめぐってネット上で騒然となり、セブン側は、急きょ販売を中止とする事態になった。

その余波で、すでに生ビールを提供しているニューデイズがマスコミで紹介される。すると認知度が上がり生ビールの売上が急上昇するに至った。

二つ目は生産性の問題。2017年度の客数(1日平均)は1,548人、対してセブン-イレブンが1,039人だから1.5倍弱。この客数を駅ナカの狭い店舗でさばくのだから、お客にも従業員にも強い負荷が掛かる。

駅の乗降客を集客し、客数で他チェーンを圧倒するニューデイズが、働きやすく、快適な店内環境を、どう実現させるのか。

三つ目が客単価の底上げ対策。お客は「移動の途中」に立ち寄り、商品を購入する。余計な荷物を持ちたくないため、購入点数は上がりづらい。客単価は368円、セブン-イレブンの6割弱といった数字になる。果たして、これを高める方法はあるのか。

以上3点の詳細を見ていこう。

生ビール1日300~400杯の日も

生ビール販売は3年前にスタートし46店舗(7月末段階)で実施している。好調な店は、例えばJR上野駅の3階にある入谷改札外(パンダ橋口)の店舗。上野公園とつながり、7月は生ビールを1日平均40杯前後、販売する。3月下旬の花見シーズンには1日100杯を超す日もあるという。JR熱海駅の店舗では、7月から定期的に実施される花火大会の日には、1日300~400杯は動くという。

赤羽店(東京・北区)では夕方4時に、椅子を取り払い、昇降式のテーブルをハイカウンターにし、簡単な立ち飲みスペースを確保している

セブンが生ビール販売を取り止めた背景の一つに車客への配慮がある。ネット上でも「車客の飲酒運転を助長する」といった多くの批判が挙がっていた。その点、ニューデイズは、駅ナカか駅隣接の店なので、車客がほとんどいない。飲酒運転の助長にはつながらない。

価格は、3年前に始めたときは420円。2017年は380円に下げて競争力を高め、2018年は酒税法の関係があり398円に値上げ。ただし100円下げて298円のセールも実施する。

生ビールのサーバーから基本はセルフでビールを注ぐが、狭い店舗では設置スペースの関係から従業員が注ぐ。1杯税込398円(545mlカップ)

業態の垣根が低くなる近年の傾向に「飲食店以外」でも生ビールを提供する先駆的な取り組みであり、徐々に定着しつつある。

キャッシュレス社会を牽引

二つ目に生産性の問題。自動釣銭機付きPOSレジやセルフレジの導入は、市中のコンビニと比較して客数が多いため、早くからレジ業務の効率化に取り組んでいる。オペレーション上、非常に効果が高いとしている。

一方で、店舗の要員不足が課題。ニューデイズは客数が圧倒的に多いために、「忙しそう」に見えて敬遠する求職者がいる。そうした事態を憂慮して、3年以上前から自動釣銭機付きPOSレジを導入し、現状は9割の店舗に設置している。

レジにお客が並んだ状況が続いても、札の見間違いによる違算がなくなり、引継ぎ時も自動で金銭がカウントされるので、人時の削減も可能にしている。もちろん、外国人従業員に対しても働きやすい環境となり、導入前よりも人員不足に苦労しなくなっている。

セルフレジは要員不足を理由に、通常のレジと併用する形で270店舗(6月末時点)に320台を導入している。決済は交通系電子マネーのみだが、現金とクレジットカードを使用できるセルフレジを開発中。今年度中に一定のめどをつける。

コンビニ大手3チェーンは、現金以外の決済が2割程度。対してニューデイズは3割程度。キャッシュレス決済を牽引している。

通行量に安住せず独自の販促

三つ目が客単価の底上げ対策。駅ナカのコンビニは実用的でありさえすればよいと考える向きもある。しかし、ニューデイズはご当地フェアを実施するなど、機能的なコンビニとしての機能だけではなく、飽きられないコンビニを強く意識している。

今年夏の北海道フェアは始めてから10年。花畑牧場や町村農場とコラボしたチルド飲料、おにぎり、パン、スイーツ、飲料、珍味、雑貨に至るまで、幅広く展開した。北海道でしか販売していない「サッポロクラシックビール」もよく売れた。北海道限定の「いろはす ハスカップ味」も大きく動いた。えびそばで有名な一幻が監修した「えびしお風玉子おにぎり」、函館の老舗レストラン「五島軒」のカレーパンといった、北海道グルメの有名商品、有名店を動員してフェアを盛り上げた。

北海道フェア(7月10日から8月6日)の目玉商品。函館市の老舗洋食店の五島軒が監修したカレーパン149円と洋食&函館カレープレート598円
札幌市のトップランクに入る人気ラーメン店「えびそば一幻」が監修した、えびしお風玉子おにぎり159円(左)と手巻きえびみそ風おにぎり149円

JR東日本グループの後ろ盾はあるものの、店舗前通行量の多さに安住せず、新たな商品、オペレーション、魅力ある販促に取り組んで、ニューデイズはコンビニの中で、独自のポジションを築いている。

シェアサイクルは新たな集客装置となるか

短距離交通インフラとして注目を集めているシェアサイクル。セブン-イレブンの参入により盛り上がりを見せるが、コンビニが直面する「客数減」解消につながる集客装置となるか。法整備も進み、地域ぐるみで取り組みが始まっている最新シェアサイクル事情をひもとく。

さいたま市のセブン110店舗以上にシェアサイクル

コンビニの店頭に今、シェアサイクル(自転車レンタル)の設置が急ピッチで進んでいる。2017年11月21日より、さいたま市のセブン-イレブンに、自転車の借用と返却ができる駐輪ステーションが開設され、現在、同市の110店舗以上で自転車の利用ができる。

自転車の借用・返却時にセブン-イレブンで利用できるクーポン配信などにより店舗への送客も図っていく

ビジネスモデルは、セブン-イレブンがスペースを用意し、ソフトバンクグループのOpenStreetがシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」のシステムを提供、自転車の卸し・小売を手掛けるシナネンサイクルが管理運営する。このビジネスモデルを用いて、セブン-イレブンは2018年度中に、さいたま市以外にも拠点数を拡大し、計1,000店舗、5,000台の設置を計画する。

シェアサイクルはNTTドコモと各自治体とで運営する「ドコモ・バイクシェア」が先行し、都内10区のほか、仙台、大阪、沖縄などで約6,000台を、駐車場や公園、店舗の敷地等に配置している。

他にも、メルカリの100%子会社「ソウゾウ」は2018年3月から福岡市でシェアサイクル「メルチャリ」のサービスを提供、市内ファミリーマートの29店舗を皮切りに、6月には福岡市とシェアサイクルの実証実験事業を開始して拠点数を拡大している。

シェアサイクルの本場中国からは、IT二大企業の一つ、テンセント(WeChatを運営)が支援するモバイクがLINE と提携して日本で事業を開始、もう一つのアリババが出資する「ofo」は世界250都市以上でシェアサイクルを展開し、日本では2018年4月より滋賀県大津市で事業をスタートさせている。

スマートフォンやパソコンで、駐輪用の「ステーション」を検索し、利用予約、決済までの一連の手続きができる。黄色いマークが、さいたま市のセブン-イレブンに設置された「HELLO CYCLING」のステーション

シェアサイクルは環境先進都市に不可欠

ところで、なぜ今、シェアサイクルなのか?

第一に民泊から始まった(とされる)「シェアリングエコノミー」の一つとして、市場の期待感がある。

メルチャリをいち早く取り込んだファミリーマートは、「健康志向の高まりやライフスタイルの多様化、環境負荷低減に向けた意識の高まりなどを背景に年々ニーズが高まっている」と認識し、「今後もサービス拠点を増やし、より地域に密着した店舗づくり・生活支援サービスの提供を進めていく」として、コンビニが追求する地域密着を、シェアサイクルがサポートすると期待を寄せている。

第二に、2016年12月に公布(2017年5月1日施行)された「自転車活用推進法」。近距離の移動に自転車は適しており、環境に優しい交通手段と位置づけて利用促進を図っていくというもの。基本方針の中にも、自転車専用道路の整備、路外駐車場の整備などとともに「シェアサイクル施設の整備」が、重点的に検討、実施すべき施策として明記されている。

自転車が増えても都内では専用道路がほとんどない。トラブルを避けるためにもインフラの整備が必要だ

東京都もシェアサイクルは2020年に向けて推進する環境先進都市の一環であり、その中で自転車利用環境の充実をうたっている。都のシェアサイクル事業には、前述したドコモ・バイクシェアが参画。自転車本体に、通信機能やGPS機能、遠隔制御機能を全て搭載し、自転車の位置情報をリアルタイムで把握して、効率的な自転車の再配置を可能にするなど、実験と検証を繰り返している。

第三に、お隣り中国の影響。

シェアサイクルは中国で急拡大したサービスである。自家用車が普及する以前は、通勤や通学の主要な移動手段は自転車であった。都市部には専用レーンも用意され、朝夕は通勤・通学の人たちで、ごった返していた。それが、自家用車の普及につれ、自転車の利用頻度は減少する。

しかし自転車シェアリングにより状況が変わった。中国では実に自転車による交通手段が2倍になったと報告されている。もともと自転車に乗る素地があったとはいえ、駐輪ステーションの多さと、スマホアプリによる貸し出しと返却の容易さが、これを後押しした。圧倒的な利便性を提供しているからこそ支持を得ているのだろう。

コンビニと駐輪ステーションは抜群の相性

さいたま市の店舗に駐輪ステーションを一気に設置したセブン-イレブンだが、今度はグループ企業のイトーヨーカ堂が、同様のビジネスモデルにより、OpenStreet、およびシナネンサイクルと協業してシェアサイクルをスタートさせた。既に6月21日よりイトーヨーカドー浦和店でサービスを開始し、2018年度中に10店200台、2020年度末までに30店500台規模で全国展開を図るとしている。

もちろん狙いは、セブン-イレブンを中心とする周辺の駐輪ステーションとの相互送客である。お客は、近隣のセブンで自転車を借り、イトーヨーカドーまで乗って返し、帰りはまた借りてセブンで返す。ドリンクやヨーカドーで買い忘れた小物等をセブンで購入してもらえれば、グループ内での相乗効果が生まれるというものだ。

イトーヨーカドーの駐輪ステーション(イメージ)。マザーステーションとして市場拡大の一翼を担う

シェアサイクルを根付かせるには拠点数の多さがポイントになる。目に付く場所に駐輪ステーションがあれば、ふだん自転車を利用しない人たちも“使ってみようかな”と考えるようになる。その点、駅前と言われる立地にはコンビニがあり、駅の乗降客にとっては“近くて便利”である。課題は「目的地」の駐輪ステーションの有無。近くのコンビニを探すよりも、目的地そのものにあったほうが便利だ。

百貨店、総合スーパー、ショッピングセンターは、セブンであれば、グループ内の確保は容易であろう。他に、市役所、総合病院、観光施設(スポット)等への設置も望まれる。

駐車場の片隅に設置された1台だけの駐輪ステーション。1カ所当たりの台数が少なくても面で押えて利便性を高める

日本は自宅から500m圏内にコンビニが無いと“コンビニ難民”と呼ばれるくらい、店舗が密集している。1店舗で1日1,000人前後の客数を集め、商圏人口約2,000人をカバーする。シェアサイクルの拠点としては最適である。

近年のコンビニはイートインコーナーを標準装備し、淹れたてコーヒーやスイーツも拡充させている。自転車の利用にも快適な空間が用意されているのだ。参加プレイヤーが多く、先が読みにくいが、コンビニが直面する「客数減」を盛り返す、一つの集客装置として取り込んでいきたい。

増加するフィットネスやコインランドリーとの一体型コンビニ

ライフスタイルの変化や女性の社会進出なども影響し、新たな24時間ビジネスが市場を席巻している。24時間ビジネスがコンビニと相互送客することで客数対策につながるのか、最新の動向を追った。

コンビニと相性がいい新たな送客装置とは?

コンビニの既存店は客数が頭打ち、それを客単価で補って、どうにか維持できている。最も深刻なのは、人手不足と人件費の高騰。これにより1店舗当たりの人員が減少傾向にある。採用できないのか、人件費の抑制が必要となり採用を控えているのか、あるいは、その両方なのか、いずれにせよ「これ以上は人手がかけられない」。これが、コンビニオーナーの総意であろう。

しかしながら、人が投入できなくても店舗の生産性は高めたい。

第一に、売れる商品を品揃えし、売上を上げる。これが王道である。

第二に、人時削減を可能とする設備の改善。十数年前にポリッシャー清掃が不要になった。近年は自動食洗器やスライド棚の導入、店舗納品分の検品(ほぼ)不要といった店舗業務を効率化し、生産性向上の改善が急ピッチで進んでいる。

第三に、新たな送客装置の設置、これが今回のテーマである。

送客装置として真っ先に思い浮かぶのがコンビニATMであろう。セブン銀行のATMは1日1台93件の利用がある(2018年5月調査)。ローソンも銀行への参入を表明し、今秋の開業を予定している。

しかし、送客装置はそれだけではない。社会環境の変化により、さまざまなニーズが生まれ、コンビニ店舗との併設が求められているのだ。

コンビニに隣接した立地の24時間フィットネスジム

「フィットネスジムの開発担当者の間では、コンビニ近隣の物件が取り合いになっています。そんなにコンビニと相性が良いのなら、自分たちでやってしまえと……」

ファミリーマート(以下、ファミマ)が24時間フィットネス事業に参入。今年2月14日、ファミマ店舗の2階にオープンした直営1号店「Fit&GO」大田長原店(東京・大田区)は、プール設備やエクササイズスタジオを持たない、マシン特化型の24時間フィットネスジムである。

「Fit&GO」大田長原店。階下のファミマには、プロテインやボディオイルなど関連商品180アイテムを独自に品揃え

出店目標は5年間で300店舗、適正立地やビジネスモデルは検証中だが、基本は加盟店に紹介してコンビニ店舗との相乗効果を図っていく。

「コンビニが併設すると、そこに毎日800人から900人の来店がある。これは(既存のフィットネスジムと比べて優位性が)大きい」とファミマ社長の澤田貴司氏は期待を掛ける。

コンビニに併設して出店すれば、毎日1,000人近くのお客が施設を認知する。さらにコンビニは夜間の出入りが頻繁なので、深夜にジムを利用するお客は安心感を得られる。ここがポイントである。

コンビニとフィットネスの親和性は、他社のフィットネスジムと併設するファミマの既存店において客数の増加が数字で実証されている

同じ業態で先行するのは2010年に米国から上陸した「ANYTIME FITNESS」(エニタイム フィットネス)。今年6月現在、国内350店舗を突破している。特徴は深夜から早朝にかけて無人になることだ。セキュリティについては、館内の全てをカメラで監視、入り口でセキュリティキー(ICチップ入り)による本人確認があり、緊急時には「パニックボタン」により警備会社(アルソック)が駆けつける安全・安心体制を確保している。

「Fit&GO」も同様に昼間は専任の従業員で運営し、夜間は防犯カメラが無人の館内を監視する。ファミマの従業員はノータッチである。同じ建物や近接地に人が出入りするコンビニがあれば心理的な安心感は得られるだろう。

コンビニの利便性に、24時間フィットネスジムをなぞらえると、次のようになる。

欲しい時に(ジムを利用したい時にいつでも)、欲しい商品を(使用したいマシンを)、欲しい量だけ(トレーニングしたい時間だけ)、購入できる(館内を利用できる)となる。

ちなみに筆者は自宅近隣のエニタイムを利用している。深夜でも女性が黙々とエアロバイクを漕いでいる。関係者に聞くと飲食店に勤める人たちに深夜の利用が多いという。

店舗は幹線道路沿いにあり、1階が24時間営業の業務用スーパー「肉のハナマサ」、2階がエニタイム、3階が24時間営業のトランクルーム。建物1棟が24時間稼働している。業務用スーパーとフィットネスジムに相互送客は期待できないまでも、24時間稼働の共通項で3つの業態を結び付けているのだ。

雨の日の客数を補完するコインランドリー事業

24時間フィットネスジムと同様の考え方で、ファミマは店舗と相互送客を図るコインランドリーを開設した。今年5月25日にオープンした「Family Laundry(ファミリーランドリー)杉並永福四丁目店」(東京・杉並区)が初のコンビニとランドリーの「一体型店舗」である。

コンビニと一体型のコインランドリー「Family Laundry(ファミリーランドリー)杉並永福四丁目店」。敷地面積330坪、売場面積48坪、駐車台数18台(コインランドリー店舗と共有)

女性の就業率は高まりを見せている。家事の負担軽減が求められる社会構造の変化に対して、需要が見込まれるコインランドリー事業を直営で展開していく。

都心のビルイン店舗や小型店などは一体型にするのが難しいが、郊外型店舗を中心に、既存店のうち3割から4割を一体型に改装することが物理的には可能だという。このランドリー「一体型店舗」を軌道に乗せれば、ファミマは数千店規模のコインランドリーチェーンを全国に展開できる。2018年度に50店舗、2019年度に300店舗体制を目指していく。

コインランドリーは1万8,000店舗を超える規模に成長。日中に洗濯する時間のない共働き世帯の増加、アレルギーや外気の関係で外干しができない人たち、タワーマンションの増加等で需要が高まっている

一般的にコンビニ店舗は降雨時に客数が減少する。反対にコインランドリーは客数が増加する。雨天時の客数対策としてはコインランドリーとは親和性が高い。ファミマのランドリーは委託業者が清掃や集金等を行うほかは、コンビニ同様、24時間無人で営業する。売場と屋内でつながってはいるものの、コンビニの従業員は基本ノータッチである。施設内の客同士のトラブルや機械の故障については、運営業者が全て遠隔操作で対応する。

スマホを使って洗濯機や乾燥機の稼働状況や予定終了時間が確認できる。時間を効率的に使う価値観という意味においては、ランドリーのお客はコンビニと親和性がある

ファミマは千葉県市原市の店舗で、(屋内はつながっていない)併設店舗でコインランドリーを実験したところ、客数が40人強、売上は1日2万円から2万5,000円前後で推移し、損益分岐点は超えていると説明した。

これもコンビニの利便性になぞらえると、欲しい時に(洗いたい・乾かしたい時にいつでも)、欲しい商品を(使用したい洗濯機や乾燥機を)、欲しい量だけ(洗い・乾したい量だけ)、購入できる(洗い・乾せる)となる。

ファミマの担当者は「広い駐車場とイートインスペースは支持されている。女性にとっても隣がファミマなので安全で安心。ファミマ自体の信頼性も強みになる」として相互送客に期待する。

ただし冒頭でも触れたが、コンビニ店舗は慢性的な「減員」に陥っている。24時間フィットネスジム、コインランドリーに続く、新しい併設・一体型の施設はあるのか。

条件は24時間営業、ファミマ店舗と相互送客、そしてファミマのスタッフはノータッチということだ。

有職主婦の増加による新しいビジネスの芽に期待したい。

ファミマ×ドンキ実験店、成功の明暗を分ける「在庫回転率」

6月1日にオープンしたファミリーマートとドン・キホーテの共同実験店舗「ファミリーマート立川南通り店」(東京・立川市)。ファミマの商品を縮小、新たにドンキの2,800アイテムを加えることで新規客の獲得、コンビニから離れてしまった客層の取り込みを図るという。いずれは既存の1万7,000店への波及を見据えるそのプロジェクトの全容に迫る。

実験の主目的は「新規客獲得」と「コンビニ離脱層の取り込み」

コンビニ業界は既存店の客数減が止まらず改革、改善が迫られている。大手3チェーンは近年、夕夜間の強化を打ち出し、具体的には夕飯の食卓に上がる商品を拡充している。顧客の中心を若年層から、共働き世帯、高齢者へのシフトを図るが時間を要するであろう。

客数対策は、さまざまなアプローチを必要とし、今年6月1日にオープンしたファミリーマートとドン・キホーテの共同実験店舗「ファミリーマート立川南通り店」(東京・立川市)も客数対策を強く意識している。ファミマのグループ会社、ユニーとドンキは昨年、資本・提携を締結しており、店づくりのノウハウ共有がグループ内で図られている。今回の実験店舗もその一環であり、同日オープンの「大鳥神社前店」(東京・目黒区)、6月29日オープンの「世田谷鎌田三丁目店」(東京・世田谷区)の計3店舗で当面は実験を継続させる。

実験店舗は、いずれもファミマ直営店を改装したもので、立川南通り店を例に挙げると、改装前のファミマの商品3,400アイテムを、改装後にファミマを2,200アイテムに縮小、新たにドンキ2,800アイテムを加えて計5,000アイテムに拡大(147%)したものだ。

ファミマ側の開発担当責任者である営業本部ライン運営事業部の今木誠 部長は実験の狙いを次のように語った。

「(ドンキの商品を取り入れることで)いかなる化学反応が起きるのか、どういうふうに変わっていけるのかを実験していきたい。来店客が伸び悩んでいる、コンビニ全体の問題である。これを打破するためには、新しい商品や、新しい陳列方法によって、今まで来店していただけなかったお客様、コンビニから離れてしまった客層の集客を主目的に実験していく」

実験により取り入れるべき成果を挙げれば、既存の1万7,000店に波及させたい意向である。

売り方と売場の変更は「立川南通り店」の場合、大きくは次の6点だ。

(1)店頭カートによる商品販売(紙製品、カップ麺、軽衣料など約10台)

コンビニでは見かけない店頭カート。価格訴求型の商品を集めた

(2)円筒型投げ込み什器による商品陳列(菓子を中心に約30台)

円筒型投げ込み什器。目的買いではなく、衝動的な購買を期待するため、圧倒的なお値打ち感が必要になる

(3)天井からの吊り下げ陳列(主に珍味)

吊り下げ陳列はビールや酎ハイの売場の前に珍味の大袋を揃える

(4)「オススメ商品」売場の新設(ゴンドラ3台)

ドンキが得意とするカテゴリー「パーティーゲーム」も売場の目玉の一つ。商圏の拡大を図る

(5)レジ前にお薦め商品の陳列スペースを新設

レジ前には、ついで買いを促す商品と、撤去した雑誌売場の売れ筋を残した

(6)ゴンドラの高さを改装前より200mm上げて1,800mmに(大鳥神社前店は2,100mm)

什器が高く、それに比して通路幅が狭く、圧迫感はあるものの、既存のコンビニでは見掛けないカテゴリー(ゲーム用品)や商品が品揃えされており、売場を回遊する楽しさを付加することには成功しているようである。

低回転、重在庫で利益を出せるのか?

ファミマにとって、この店がかなり“挑戦的な”試みであることは否めない。

コンビニの商圏設定は首都圏であれば1,500人程度といわれている。ドンキの商品を投入することで基礎商圏を深堀りするのか、商圏拡大を図るのか、その両方なのか問われるのだが、客層の男女比「6対4」を「5対5」に持って行く狙いはよしとしても、広域からの集客を積極的に図るとすればリスクを背負うことになる。それは在庫リスクである。

商品アイテム数は約1.5倍程度であるが、ドンキの高額商品導入や陳列手法などにより、在庫金額はそれ以上に膨らんでいると推測される。コンビニの在庫は1店当たり700万円程度(売価)、今回の実験店は、その2倍近くになるだろう。ドンキの店舗はチェーンストア企業の中でも回転率が低い。高回転のコンビニと低回転のドンキが融合すれば、ファミマ側にとってオペレーションは困難であり、加盟店への波及は慎重にならざるを得ない。

「在庫の管理をどうするのか、利益にどうつなげていくかは、これからの実験の中で検証していきたい」と担当の今木氏も、その点は課題であると認めている。

ドンキの内情に詳しい関係者は次のように語る。

「ドンキは低回転で重在庫、そこがアキレス健だが、だからこそドンキの魅力を発揮できる。ABC商品のAは黙っていても売れていく。むしろCを偏愛して、担当者が単品“拡販”するところに強さがある。当然Cの商品は有利な仕入れができるから利益率も高い」

コンビニは加盟店ビジネスを前提にしている。センスや能力に関係なく、きちんと手順を踏めば儲かる仕組みを提供することが責務であろう。ドンキが得意とする、単品拡販と売り切るチカラ、これを誰でも出来るオペレーションに落とし込んでいくかは、逆にコンビニチェーンが培ってきたノウハウに掛かっている。